左右に耳のような、羽根のようなかたち。おちょぼ口のようにも見える小さな窪みは、何かを話し出しそうである。愛嬌たっぷりの生き物のような姿は、作家によれば「女性」のイメージなのだという。アクセプタブル(acceptable)は「受け入れられる」の意。作家は、この作品と対で先の尖った「男性」をイメージした作品も制作し、それも本展に出品されている。いずれの作品も、その狭義の意味を超えて、豊かなイマジネーションを誘うフォルムへと至っている。それは昨今、現代美術の世界で若手作家らに見いだされる「幼形成熟」にも通じる、愛らしさの中の強烈な主張である。単純化されたフォルムは、内部の発砲スチロールを抜き取る脱乾漆の技法にもよる。この時期、作家は内部の発泡スチロールをほとんど生理的な理由から掻き出したという。日本の工芸作家は、表面を通してその下層を関知する、いわば触感的視覚とてもいうべき資質をもつ者が少なくない。日本で工芸的な表現が発達したのもそのような民族性を反映していよう。この作品の大らかなエロティシズムの裏に、そうした繊細な素材感覚もあるのだ。
茨城県つくば美術館主任学芸員・外館和子