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CRITIC

2009年10月14日 外館和子「城陽新聞」

オポジット(opposite)は「対生の」の意。艶やかな漆黒に覆われた丸みのあるかたちから角のようなものが生えている。一方は長く、他方は短く、台座の上でたくましくバランスを取る、木製の台座部分も作者自身の手によるものだ。 “膨らみと突起”というコントラストのある形態は、この作家の制作初期からの基本でもある。ただし、作品の多くに朱漆を用いる笹井の作品のうちで、黒は比較的珍しい。かつて、漆塗りの椀などは、朱を一家の主に、黒は妻や他の者が使うことが一般的であった。朱漆の方が黒漆より高級とされていたからである。しかし、今日の造形においては、漆の色調もまた表現内容に即して選ばれる。しっとり とした塗り立ての技法は、黒いフォルムに威厳を与えている。 この作品に用いられている、麻布を漆で塗り重ねられる乾漆技法の起源は中国にあり、奈良時代には日本の仏像の多くにも用いられた。しかし、この作品のように発砲スチロールを胎とする手法が始められたのは漆芸史上、1960年代に入ってからのこと。軽量でボリュームを出しやすい発砲スチロール胎乾漆によって、漆の造形は表現の幅が格段に拡がった。 笹井が学び、現在は自らも指導にあたる京都市立芸術大学を中心に普及した技法でもある。

茨城県つくば美術館主任学芸員・外館和子









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