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CRITIC

2009年10月24日 外館和子「城陽新聞」

タイは中国や日本と並び、漆の文化を育んできた国である。笹井史恵は、京都市立芸術大学および大学院に学んだ後、2003年から05年まで、タイの国立チェンマイ大学で漆を学んだ。この作品は、発砲スチロールを型に、タイでサー・ペーパーと呼ばれる手漉きの紙を漆で塗り重ね作られている。サー・ペーパーは日本の手漉き和紙にも似た、独特の手触りと腰のある紙である。 朱漆に彩られた花びらのような皿の内部には、タイの文字が一つ一つ立体的に記されている。タイ語で「漆」を意味する「ラック」という言葉には、「愛」という意味もあることに、作家は深く感動したという。 タイ語のアルファベットは全部で44文字。その全てを慈しむように、作家は朱漆の花びらを仕上げていった。 一層塗るごとに、漆は乾かさねばならない。漆の乾燥とは、いわゆる塗料の乾燥とは異なり、水分が飛んで乾くのではなく、空気中に水分と反応して硬化するものである。ゆえに、ドライヤーなどで強制乾燥することはどはできず、 ある湿度環境の中でじっくりと待つ時間も必要だ。いとおしむような時間の果てに、漆の作品は完成を見るのである。

茨城県つくば美術館主任学芸員・外館和子










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