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CRITIC

2009年10月28日 外館和子「城陽新聞」

身の丈約80センチもの赤い魚が、巨体をくゆらせ、展示室の壁を悠々と泳ぐ。小さなエラのような突起のほかは至ってシンプルな形態ながら、どこか得たいの知れない不適な勇姿である。脱乾漆の技法によるこの作品は、内部が空洞であるため、そのサイズにもかかわらず軽量で、壁面を軽やかに遊泳しやすい。また、ぬめりを感じさせる作品表面には、笹井史恵が好んで用いる「塗り立て」の技法が用いられ、作品の生気を表現することに役立っている。この作品は、今回の企画展のために制作された新作8点のうちの一つ。最上層には大子町から、この度の展覧会に際して提供された漆が、2度、3度と塗り重ねられている。茨城県は岩手県に次ぐ全国第2位の漆の産地。県北に位置する大子町はその代表的な地域である。さらりとして伸びが良く、透明度の高い良質の大子漆は、これまで県内および関東在住の工芸家の作品に使われてきたが、本展をきっかけに、広く関西にも普及していくのではないだろうか。 “作家ものには良質の大子漆”を、全国に向けて発信していくきっかけになれば幸いである。

茨城県つくば美術館主任学芸員・外館和子










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